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言語データとその「鏡」

機械学習モデルを用いた言い誤りと失語症例の分析

DaSiC203 ワークショップホームページ

健常者は日常の発話でついうっかり、また失語症患者は主に脳の疾患により言い誤り(錯語)を表出することが知られています。 今回のイベントでは、こうした言語データを機械学習モデルと神経科学といういわば2枚の「鏡」の前に置いた時、そこに映し出されるのはどのような景色、振る舞いかを実演を交えて示します。 はたしてそれは機械学習モデルの貢献か研究者の願望か。言語学者、機械学習の専門家、言語聴覚士という登壇者それぞれの3つの視座から、実際の健常者の言い誤りや失語症患者の錯語の実際のデータを供覧しつつ、それらのデータが機械学習モデルではどのように説明されるのか、から議論していきます。

スケジュール

  1. 13:30-14:10 趣旨説明:寺尾康 (静岡県立大学)
    • データの紹介1:健常者の言い誤り 寺尾康
    • データの紹介2:失語症の錯語: 高倉祐樹 (北海道大学),立場文音 (JCHO 熊本総合病院),大門正太郎(クラーク病院)
  1. 14:10-14:50 機械学習からみた言語モデルの鏡 浅川伸一 (東京女子大学)

    • 休憩
  2. 15:00-16:15 認知モデルからみた言語モデルの鏡と機械学習の鏡との接点
    • 認知モデルの説明: 健常者:寺尾康,失語例:上間清司(武蔵野大学), 橋本幸成(目白大学)
  3. 16:25-17:25 実演 鏡を覗いてみると: モデルのデモンストレーション 浅川伸一、吉原将大(東北大学)
  4. 17:25-17:40 議論 登壇者全員

左: WEAVER++ モデルにおける物品命名時の情報の流れ。 レンマ検索後,音声単語計画は厳密にフィードフォワード方式で行われ,フィードバックは音声理解系を介してのみ行われる。 内部モニタリングには,右方向に増分的に構成された音韻単語を音声理解系にフィードバックすることが含まれ,外部モニタリングには単語の発音を聞くことが含まれる。 Roelofs (2004) Fig. 2.
右: 図は,子どもに見られる模倣による言語習得の現象と,この処理過程が前提とする反射弧に基づく。 子どもはこの手段によって,言葉の聴覚的記憶 (聴覚的単語表象) と,協調運動の運動的記憶(運動的単語表象) を持つようになる。 これらの記憶が固定されている脳の部位を,それぞれ「聴覚心像の座」と「運動心像の座」と呼ぶことにする。 本スキーマでは,これらの部位を文字 A と M で表す。 反射円弧は,音響心像を A に伝える求心性枝 a A と,M からのインパルスを発声器官に伝える遠心性枝 M m からなり,A と M を結合する交連によって完成する。 Lichtheim (1885) Fig. 1.

WEAVER++/ARC モデルの概念図。 脳の領域にマッピングされた連合ネットワークと条件-行動規則。 語彙検出の語形符号化成分を赤で強調。N は名詞。Roelofs (2019) Fig. 1